自と仮他

思想・哲学

自じと仮かり他た

荒井 辰也 著

自は在る。
仮他の存否は不明である。

本書53ページより
『自と仮他』の表紙

内容紹介

著者による本書の紹介です。

私たちは皆、多かれ少なかれ悩みや不安を持ち生活をしています。

その悩みや不安を親しい方が共感できる場合は、対話によって解決できることが多いでしょう。でも一部の方の悩みや不安は、保護者の方などの親しい人間関係があっても共感してもらえず、解決できていないことがあります。

私たち一人一人には個性があります。同じように悩みや不安にもお一人お一人の個性があります。共感してもらえていない悩みや不安のうしろには、共感してもらえていない「その方だけが持っておられる心の個性」が見え隠れします。

お一人お一人の悩みや不安の個性はそれぞれ違うのに、それを「引きこもり」「不登校」「摂食障害」「自傷」などの大きなグループに押し込めて共通した対処をされていないでしょうか。

本書は、この個性を「わたしって何?」という思いから進めて、「わたしが話しているアナタって何?」という疑念の捉え様、「わたしを取巻く、いろいろなモノって何?」という不安の捉え様、「なぜ、今がこうなっているの?」という時間の捉え様などの、不安の元になりがちな事柄のいくつかを取り上げました。

悩んでおられる方や不安をお抱えの方のお一人お一人を、十把一からげにせず、個性に寄り添い理解するための一助に本書がなれば幸いです。

書籍紹介動画

約70秒・音声が流れます。

本書の一節

「他の人って、まず本当にいるの?」と。

27ページ

母と自分とは「同一」だと疑いもしなかった幼い日。母から「おとうとがもうすぐできるから、仲良くしてあげてね」と聞かされたとき、著者の世界は変わりました。近いか遠いか、血のつながりがあるか、知っている人かどうか──さまざまな条件と、他が「在る」ことの関係を長いあいだ考えた末に、幼い著者は冒頭の問いにたどり着きます。

自は明らかに在るが、他者は在るか無いか証明できない不明な事柄である。くどいが重要なので再記するが他は存在しないのではない、他は存否が不明である。

本書29ページ「どこまで他かの追求」より

この本について

本書は、自ら考える自分の思考を「自」、存否が不明な自以外のものを「仮他(かりた)」と呼んで分け、在ると分かる事柄の上にだけ考えを積み重ねていく論考です。「常識」や「当然」を鵜呑みにせず、知らないことを「無い」とも「在る」ともせず「不明」とする──その態度で、自と仮他、感覚、不安、時間、ことばと思考を順に考えていきます。

著者は冒頭の「予めのお断り」で、本書は深刻な訴えや症状の主観ではなく「その様に考えられる」という思考の事柄であり、事物の考え方についての一形式に過ぎない、と断っています。悩みや不安を抱える方、そしてその周りにいる方に、こうした考え方の一冊があることを知っていただけたらと思います。

本書が扱う問い

  1. 問い一内容紹介よりわたしって何?自ら考える自分の思考を「自」と呼び、考えている自がどこにあるのかをたどります。本の紹介で読む →
  2. 問い二内容紹介よりわたしが話しているアナタって何?自以外のものを、在るとも無いとも決めず「仮他」と呼びます。本の紹介で読む →
  3. 問い三内容紹介よりわたしを取巻く、いろいろなモノって何?見える物・触れる物の確かさと、不安の分類を取り上げます。本の紹介で読む →
  4. 問い四内容紹介よりなぜ、今がこうなっているの?時間の捉え方は一つではないことを、多くの例で示します。本の紹介で読む →
  5. 問い五目次より自は何で思考するかことばにならない思考、言語と思考の関わりを考えます。本の紹介で読む →

書誌情報

書名
自と仮他(じとかりた)
著者
荒井 辰也
ジャンル
思想・哲学
判型・ページ数
上製本・四六判・312ページ
定価
2,530円(本体2,300円+税)
発売日
2025年1月23日
ISBN
978-4-434-35286-7
発行
ブイツーソリューション(発売:星雲社)