本の紹介
内容紹介
童話は子どもだけのもの、と信じ込んだまま大人になった人に特に捧げたい童話集です。子どもが読んでもいい物語は、大人が読んでもやっぱりいいのではないでしょうか。自然や人や動物を観察していると、どこからともなく彼らが語りかけてきて、そして物語が生まれます。そうしてただ思いついたままの物語、語られた童話の断片を、子供に語って聞かせたら、ひとりでに物語が転がりだすのです―。
この本のこと
- 蟻やもぐら、すずめ、たらこ、洗濯物までが主役になる《動物編》9篇と、お姫様や森の姉妹、煙草好きの男、豚肉が大好きな男などが登場する《人物編》8篇、あわせて17篇を収めています。
- いくつもの話が、「今日はそのお話をしましょう」と、語り手が「みなさん」に語りかけるように始まります。
- 《人物編》の「赤い風鈴」は「僕」が、巻末の表題作「ポルヴォ・ロマンス」は「私」が語る物語です。表題作は二つの章からなる、この本でいちばん長い一篇です。
収録作品
本書の目次のとおりです。数字は各話の始まるページ。紹介は、それぞれの話の書き出しから。
《動物編》9篇
蟻ともぐらとミミズ7
こそこそ隠れるだんごむしの話13
ひとりぼっちのむかでの話27
カエルを食べかけたニワトリの話37
黄色いシャツと黒いパンツと白い靴下の話47
通訳が得意なすずめの話53
頭のいい海老の話67
白いたらこと赤いタラの話77
世界がうんちでいっぱいになる話89
《人物編》8篇
舌を引き抜かれたお姫様の話97
白い電球と黒い電球の話119
魔法のお鍋の話133
魔法の力を持ったナンバンギセルの話151
赤い風鈴165
馳夫171
豚肉が好きな男の話177
ポルヴォ・ロマンス201
試し読み(「蟻ともぐらとミミズ」より)
蟻ともぐらとミミズ
昔々、蟻は今のように小さくなく、とてもとても大きな動物だったそうです。その大きいことといったら、象なんか全く比較になりません。何しろ、体の割に細いその六本の足だって、丸太くらいの太さはあったんです。そして反対に、体の割に大きな顎は一噛みで山が崩れてしまうほどの大きさだったんですから。そんなわけで他の動物は蟻を怖がり、蟻はそれを得意がって、
「えへん、えへん」
と空咳ばかりしておりました。
そんなある日、もぐらはいつものように土の上で餌を捜しておりました。だって、その頃のもぐらはちゃんと大きな目があったんですから、地面にもぐってしまうことはなかったんです。その目のきらきら光ることといったら、まるでぴかぴかに磨いた宝石のようでした。もぐらはそんな目を右にぎょろり、左にぎょろりと動かして、餌が目に入れば、たちまち食いつこうと狙っていたのです。
そこへ、一匹のミミズが通りかかりました。もぐらは、それっとばかりにミミズに飛びかかって行きましたが、ミミズはするりと逃げてしまいました。それもその筈、ミミズには昔はとても長い足と小さく開いた目があったんですから、逃げるのは簡単だったんです。
(つづきは本書で)
本書 8〜9ページより