物語の導入
『魔力復活争乱』——古代の精神魔法が蘇るきっかけとなり、『セイバーの子』が消滅した一週間にわたる事件——から半世紀。人々は遥か昔に失われていた魔力を復興させると同時に、科学文明も独自に発展させてきました。かつては特権階級のものだった魔法の技と科学の結晶は、広く庶民にまで広がり、この世界では魔法が科学と同じような地位を占めています。
北の巨大帝国キャロルと、南の王国レガソーニ。二つの大国に挟まれた人口わずか二万人の小さな王国モトラは、降水量が多く「水の国」とも呼ばれます。乾いた土地に住む両大国から垂涎の目で見られるほど農林水産業が潤い、両国が水面下でしのぎを削るなかでも、モトラは完全に独立し、自治を保ってきました。
ある夕方、訓練場で射撃術と剣術の練習を終えたあなたは、同胞のオレリに呼ばれて参謀室へ向かいます。レガソーニ王国の使者が、アレイン砦を軍事利用させてほしいと申し出てきたのです。アレイン砦は、モトラの前国王フレストロンが建てた石造りの堅固な要塞。いまでは王侯貴族の別荘代わりに使われ、軍事上の価値など忘れられた辺境の砦でした。
陸軍大臣である父ラインハルトによれば、キャロルでは軍隊が北方で集結している、魔法使いの集団が古の技で妖魔を呼び出そうとしている、といった不穏な噂が聞こえてくるようになり、ついにはレガソーニの斥候が国境付近で翼を備えた巨大な魔人を目撃したといいます。あなたに課せられた任務は、モトラの代表としてアレイン砦へ行き、そこで待つレガソーニのもう一人の使者とともにキャロル国内を偵察すること。不穏な動きが事実であれば、直ちにクレージュに戻って報告するのです。
出発は明朝。「無茶だけはするなよ。お前はそそっかしいからな」——父親の顔に戻ったラインハルトの言葉を背に、あなたは旅の支度に取りかかります。
※ 本書の「プロローグ」に描かれている範囲で紹介しています。